暗闇の中、揺らめく蝋燭の光だけがぼうっと浮かび上がっている。
自分が白い布の上に横たえられているのだと、気付くまでに幾ばくかの時間を要した。状況を把握しても尚、真生子の意識は完全には回復せず、頭の中がドロリと混濁したままだった。ゆっくりと体を起こすと、横になっていた場所が寝台の上であるということが分かった。辺りを見回すが、ベッドサイドに設えられたテーブル上の蝋燭以外に光源はなく、部屋の隅の方は寝台から離れるに従って闇に沈み、未だ馴染まぬ目では目視することが出来ない。恐る恐るベッドから下りようとした時、真生子は異変に気が付いた。自身の首から、細い鎖が垂れ下がっている。目で追って辿ると、床の上で弛んだ後、先端はベッドの柱に括り付けられていることが分かった。自分の首に手をやると、冷たい金属のものに触れる感覚があった。首輪を着けられている──そう気付くと、真生子は急激に覚醒した。
あるスタンド使いとの戦闘中に、後ろから頭に強い衝撃を加えられたことを覚えている。情けないことに、そのまま気絶してしまったらしい。カタカタと震え、急速に冷たくなる指を握り締め、深呼吸を繰り返してパニックを起こすのを防ぎながら、なんとか冷静さを保つように努める。
「ステラ・マリス……」
呟くように半身の名を呼ぶと、暗闇から溶け出すようにフワリと白い腕が現れた。首から下がる金色の鎖を両手で掴み、全力で左右へ引くが、真生子のスタンドの力ではヒビすら入らなかった。諦め、力を溜めて光線を放とうとするが、このような暗い部屋では光源が足りな過ぎる。
真生子は途方に暮れながらも、燭台を手に取り、壁伝いに歩き始めた。動く度、鎖が擦れて不快な音を立てる。直ぐに豪華な装飾の扉が見つかった。首輪の鎖は最早ピンと張られ宙に浮いている。外へ出ることは出来ないだろう。それでも真生子は震える手でノブを握り、ゆっくりと回した。
──どさり。
一瞬で視界が闇に閉ざされ、背中に柔らかな鈍い衝撃を感じた。何が起こったか分からなかった。視野の隅、遠くの方で小さなオレンジの光が瞬いているのを確認したが、直後に見えなくなってしまった。
「ス……テ、ラ」
仰向けに寝転がされたのだと理解するよりも早く、真生子は自身のスタンドを再び呼び出していた。弱々しい、ぼうっとした鈍い光が辺りを照らし出す。目を凝らすと、先程目覚めた時と同じ景色を見ているのだということに、真生子は漸く気が付き、戦慄した。
「ジョースターの娘よ」
暗闇から、低い声が響く。
ミシリ、と広い寝台の端が軋み、シーツが擦れる音がした。マッチを擦るような音に目を向けると、ベッドサイドに戻された燭台の上で、細い蝋燭に再び火が灯されていた。
「分かっているのだろう? 自分が何処に囚われているのか」
真生子は止めていた息を吐き出した。
炎を受けて光る金髪、青白い肌。ギラリとした赤い双眸が、固まったままの真生子を真っ直ぐに射抜き、熱い唇が僅かに歪むのが見えた。ゾッとするほど美しい貌、妖しい色気。骨張った指がヌッと伸ばされ、真生子の頬に掛かるブルネットをゆっくりと掬い上げる。がっしりとした首に真横に走る生々しい傷痕と、筋肉の盛り上がった肩の向こうに僅かに覗く星の痣が目に入る。赤い眼差しから逃れる為にそれを凝視していると、それに気付いたのか彼はニヤリと笑い、右手を肩に回して痣に触れた。それから真生子の頬、喉元に触れ、そのまま襟口に指を差し入れる。痣のあるあたりに、ヒヤリと冷たい感触。ふる、と背筋が震え、それから漸く真生子の金縛りは解けた。
「DIO……っ」
上に覆い被さっている相手から少しでも距離を取ろうと、拙い動きで後退る。恐怖のあまり、息がうまく吸えない。そんな状態でも、真生子は僅かに残っていた理性と闘志を働かせ、スタンドを使役して攻撃しようとした──が。
「っ!?」
DIOの手の中から放たれた縄のようなものに、真生子の中から分離して再出現しようとしていたスタンドごと縛り上げられ、シーツの上へ倒れ込むことになってしまった。皮膚に食い込む鈍い痛み。思わずぎゅっと閉じていた目を開けると、よく見知った茨が真生子の体を拘束していた。
「ハーミット・パープル……!?」
全身に絡み付いてくる紫の茨に、真生子は堪らず苦痛の声を漏らす。ギリリと締め上げられ、そのまま絞め殺されてしまうのではないかという恐怖心が全身を支配する。
震えるばかりで二進も三進もいかなくなってしまった真生子を愉快そうに見下ろし、DIOは低い声で笑った。
「似ているが、ジョセフのスタンドと同一のものではない。私の首から下は、お前の知る通りジョナサン・ジョースターという男のものでな。この茨は奴のスタンドなのだよ」
つまり、自分のものではないと、そう言いたいらしい。奴は二つのスタンドを持っている──真生子は惨めたらしく体を縮こませながらもDIOを睨んだ。
「獣に囚われた兎の様に怯えているというのに、目つきだけは反抗的だ」
グイと顎を掴まれ、真生子は無理矢理正面を向かされた。
「真生子……私にはお前の頭をこのまま砕くことも出来る。赤子の首を捻るよりも簡単にな。何故そうしないか分かるか? お前は私にとっての脅威ではないからだ」
真生子は急に頭の中が冷たくなり、呼吸を自分で制御出来なくなっていることに気が付いた。過呼吸を起こしていた。
「愚かな娘よ……お前は余りにも貧弱で闘う力を持たない。だが、お前のその傷を癒すスタンドの能力には、些か興味がある」
「ひ、っ、」
ビッ、という嫌な音と共に、内腿に鋭い痛みが走った。
腿の皮膚をストッキングごと裂かれたのだ。真生子は涙を零して荒い呼吸を繰り返しながら、自我とは関係なく発動されるスタンドの治癒能力が、太腿に走った赤い線をゆっくりと修復してゆくのを感じていた。その様子を観察していたDIOは、治りかけた傷口を爪先でなぞり、そして再び、今度は更に深く切り裂いた。
「ぅあっ!」
「成る程、自然治癒力を高めて傷の治りを早めているのか?」
「い、いた、痛い、嫌、いやぁっ、いやああっ!」
グリグリと指で抉るように傷口を拡げられ、堪らず叫び、のたうち回る。真生子が激しく暴れたのでDIOは指を離したが、今度は代わりに顔を近づけて溢れる血をべろりと舐め取った。真生子は身を固くする。DIOは丹念に血を吸い上げ、舌で完全に拭い取った。既に傷は塞がり始めている。真生子はひくひくと情けなく泣きじゃくりながら彼の方を見た。
「ジョースターの血は実にこの体に馴染む……それに加え、まろやかで大変美味だ」
「はあ、はあっ、はあっ」
震える脚を叱咤して、真生子はどうにかDIOの顔面を蹴り上げようと膝を上げた。直ぐ、太い腕に足首を掴まれ、試みは失敗に終わってしまう。
「抗おうなどと余計な事を考えぬことだな」
ぼぎ、という鈍い音。
真生子は再びシーツの上で仰け反り、絶叫した。折れた足首をきつく握り締められ、余りの激痛に声にならない叫びが喉から漏れる。涙に塗れて何も見えない視界の中、DIOが無造作に手を離し、ゆっくりと首輪の鎖を引くのが見えた。
「実に脆い……仲間に護られるばかりで、自分が傷を負う事も滅多に無かったのだろう、なあ、真生子」
可哀想に、と妙に芝居がかった口調で言うDIOを睨め付ける。彼が言うことを認めたくはなかったが、事実、真生子は回復役として仲間達の後ろで立ち回り、サポートするばかりで、直接的に敵と対峙することは少ない。護られるばかりで──というDIOの言葉は的を得ていた。
砕けた骨がゆっくりと繋がり始め、ズタズタになった肉が徐々に回復してゆく痛みに耐えながら、真生子は枕に顔を押し付けて息を繰り返し、過呼吸を抑え込んだ。
「小娘だというのに、ずいぶんと扇情的な顔をしている」
鎖を強く引かれ、頭が持ち上がる。苦しくて唇を噛む。DIOの邪悪なルビーレッドが間近に迫っていても、真生子は目を背けなかった。
「真生子。まだ自分が置かれている状況に気付かないのか」
くつくつと喉を鳴らして笑うDIOに、真生子は僅かに目を細めた。言っている意味がわからない。一瞬で真生子を殺すことのできる相手が目の前にいて、抵抗することも出来ないが、彼はまだ真生子を殺すつもりではない──という以上のことが、今の状況にあるのだというのか。
しかしその疑念は、DIOの次の一言で追い払われることになる。
「お前……生娘か?」
さあっ、と頭から血が引いていくのが、自分でもはっきりと分かった。
「な……? 何を言って……」
「男と交わったことはあるのかと訊いているのだよ」
「…………」
真生子は黙った。この男はこれから何をしようというのか。あらゆる可能性が頭の中に浮かんでくる。
沈黙を保っている真生子を、DIOは鼻で笑い飛ばす。顎に指を掛け、顔を無理矢理上げさせられた。
「まあいい。その血の滑らかさは、処女であるからなのか……あるいは、単にお前がジョースターの縁者であるからなのか……それを確かめてやる」
「…………っ」
茨が解けたかと思うと、今度は一瞬で腕を拘束され、頭上で固定された。
「い……や、」
震える声で拒否の意思を示すが、DIOはいやらしく唇を歪ませるばかりだ。冷たい手が制服の上を這ってゆく。ぎゅ、と胸の膨らみを下から掴み上げられ、真生子は嫌悪感とおぞましさから引き攣った悲鳴を漏らした。
「何を怯えている。これから私が、今までお前が感じたことのない、蕩けるように甘い快楽を与えてやろうというのに」
囁くような猫撫で声を耳元に吹き込まれ、ぞわりと総毛立つ感覚が全身に広がる。込み上げてくる吐き気を抑え、息を飲み込んで嘔吐するのを堪えた。
DIOの無骨な手がセーラー服をたくし上げると、清楚な下着に覆われた乳房が露出する。つう、と谷間を指が下ってゆき、ブラジャーの中央で止まった。布が裂ける音。押さえ込まれていた胸が解放される感覚に、破られたのだ、と直ぐに解った。
「っ……!」
冷たい掌が双丘を押し上げ、包み込んで愛撫し始める。ゆっくりと押し潰され、揉まれ、揺さぶられると、再び湧き上がる嫌悪感から顔を歪めてしまう。外気に晒されて起き上がった乳首を摘み上げ、軽く抓られると鈍い痛みが走った。
何度も執拗に表面を擦られているうちに、信じ難く浅ましい、愚かしい感情が、腹の奥からじんわりと広がってくるのを、真生子はただ拒絶し続ける他なかった。
「いやだ、いや……嫌、」
狂ったように同じ言葉を繰り返す真生子を、DIOは憐憫と好奇を込めた瞳で見下ろしている。
「そう嫌悪することはない。女の身体というのはそういうものだ。受け入れてしまった方がお前にとっては楽だろう」
「ひっ!!」
スカートの中に潜り込んできた手を退かそうと脚を跳ね上げるが、またしても簡単に捉えられてしまう。力任せに下着を引き摺り下ろされ、同時にストッキングが鈍い音を立てているのが聞こえた。
「う……嫌、お願い……やめて……」
意味のない懇願だと分かっている。それでも、ボロボロと涙を零しながら、口に出さずにはいられなかった。真生子の微かな願いを、DIOは鼻で笑って無視すると、今までに誰にも触れられたことのない場所に彼の指が潜り込んできた。
「い、いや、嫌だ、いやあっ!」
「暴れるな……無理矢理捻じ込まれたくはないだろう」
「あ……っ!?」
DIOはその巨体を屈め、腿の付け根に顔を押し付けてくる。直後、ぬるり、と滑るような感覚。カアッと頭に血が上る。何をされているのか、信じたくなかった。ぴちゃぴちゃとわざとらしい水音がベッドの上に響いている。おぞましい感覚がそこから駆け上ってきて、真生子は言葉では言い表せない程に厭忌せずにいられなかった。
「……あっ……やだっ……!」
一際感じてしまう箇所をしつこく責め立てられる。反応するまいと唇を噛み締めても、喉奥からせり上がる情けない声を堪えることができなかった。DIOの唾液と、真生子が分泌した潤滑液に塗れた箇所は熱く、どうしようもないほどに痺れ、恥ずべきことに、更なる刺激を貪欲に欲し始めていた。心はこれほどまでに拒絶しているというのに、なぜ身体は違う反応を示すのか。ふやけた頭では理解できない。
訳も分からぬまま呼吸の乱れ始めた真生子の様子を伺い、DIOは愉快で仕方が無いという風に笑った。真生子の中にゆっくりと太い指を挿し入れ、膣の壁を撫で回してくる。そうされ続けていると何故だか頭がクラクラするような感覚に陥り、特定の場所を指の腹で刺激されると腰が跳ねてしまう。その場所を見抜かれ、何度もねちっこく愛撫され続け、気が付くと真生子は唇をだらしなく半開きにして荒い息を繰り返すことしか出来なくなっていた。
「良い子だ」
ずるりと指を引き抜き、塗れた愛液を舐め取ってから、DIOは優しげな声で真生子を宥めた。小さく震えている太腿を開き、腰を割り込ませてくる。
ピタリと粘膜に当てがわれた固いものが何なのか、理解するよりも早く、その感覚は唐突に真生子の身体を貫いた。
……激痛。
狭い場所を無理矢理拡げられ、こじ開けられているような引き攣れる痛み。真生子はそれから逃れようと身体を捩り、上方へ腰を移動しようとしたが、手で掴んで強引に引き寄せられた。
「あ、いやっ、痛い、いたいっ! いやあっ、ああぁっ!!」
あまりの苦痛に仰け反る。硬く握り締めた拳の中で、爪が皮膚を傷つけてしまい、鈍い痛みが走る。抑え付けられた足がガクガクと震える。嘘、嘘、嘘……譫言のように繰り返しながら、真生子は自分の足の間を見下ろした。DIOがゆっくりと腰を引くと、彼の凶悪な熱の塊に、一筋の赤色がこびり付いているのが見えた。
眩暈がする。
「嘘ではない。真生子、喜べ……このDIOによってお前は今『女』になったのだ」
「ふ、ぅう、う……うぅ」
恐怖、憎悪、嫌悪、嘔吐感、一抹の快楽。
様々な感情がごちゃ混ぜになり、唯々涙となって具現し、溢れ出してくる。
グズグズと泣くばかりの真生子に、加虐心を唆られるらしい。DIOは唇を舐めると、一息で真生子の奥を貫いた。
「っ!?」
子宮の入り口が擦り上げられる。激痛の中に、感じたことの無い奇妙なものが生まれたことに真生子は気付いた。
「……あ、いや……こんなの、こんなの……っ」
規則正しく身体を揺さぶられながら、甘い痺れが結合部から全身へ駆け巡っていることを認めたくない一心で、喉元を震わせながら懸命に声を抑える。その様子を面白がるようにDIOは緩急をつけて肉棒を突き動かし、真生子を犯し続けた。ピストンの度溢れる愛液が泡立ち、粘着質な音を立てる。苦痛を堪える呻き声は既に甘い鳴声に変わり、真生子はすっかり彼に可愛がられるばかりの一人の女へと変えられてしまっていた。
「あっあっ、あっ、はぁっ」
「良い声で啼くようになった」
「あ……っ、うっ、あああ……!」
勃起し、敏感になった突起を親指で擦られながら激しく犯され、
真生子は恐ろしい快楽の波に飲み込まれ、身体を強張らせた。
頭が真っ白になる。内腿が激しく痙攣し、全身の力が抜け、グッタリとシーツに沈み込んだ。何が起こったか、自覚するには少し時間が必要だった。
……哀しい。情けない。辛い。苦しい。死んでしまいたい。様々な感情が心の中を過っては消え、また現れては薄れていく。
白い靄が掛かったように朦朧とする意識の中で、ぼんやりと仲間達の事を考え始めていた。真生子が姿を消したことに彼らが気付いていない訳が無い。
きっと、今頃心配して、行方を追ってくれているだろう。そう信じたい。
皆に会いたい。お兄ちゃん、おじいちゃん、アヴドゥルさん、ポルナレフさん、イギー、
「か……きょういん、くん」
ぼそり、と自分の口から無意識に漏れた言葉に、真生子はハッと我に返った。
「何? 花京院だと?」
DIOは低く笑った。真生子の腕を縛っていた茨が解かれたかと思うと、肩を引かれて繋がったままうつ伏せにされ、シーツに上体を押し付けられる。
真生子は腕を解放されたというのに殆ど無抵抗のまま、ただ黙って震えながら、シーツにしがみ付いていた。
「承太郎でもジョセフでもなく、花京院、か……フフ、実に愉快だ」
「…………」
「花京院が、お前がこのように私にたっぷりと可愛がられたことを知れば、どう思うだろうな、真生子」
DIOは耳元でそう残酷な言葉を吐きながら、真生子の腰を持ち上げ、引き寄せる。パタリと軽い音を立て、シーツの上に赤い液体が丸く落ちたのを真生子は見た。
憎悪の対象、母の命を蝕む一族の敵に、今まで大切にとっておいたものを一瞬で踏み躙られ、奪われたのだという事実を改めて認識させられ、再び嗚咽が込み上げてくる。
「う……ひっく、う、……」
「残念だったな……だが安心しろ、他の男のことなど考えられぬ程、快くしてやろう」
「ひ……!」
再奥を突かれ、真生子はまた、自分の意思とは無関係に与えられる快楽に侵されてゆく。獣の交尾のように激しく荒々しい抽送だというのに、破瓜の痛みは殆ど薄れ、ただ圧倒的な快感だけが頭の中を満たしていた。娼婦のように喘ぎ、涙と様々な体液を零し、抗うこともできずただただひたすらにDIOを受け止める。激しく出し入れされ続ける灼けた杭をヌルヌルと呑み込みながらも、こんな筈ではないと、嫌だと、僅かに残った理性が悲鳴をあげている。
DIOは真生子の汗ばんだ背中に吸い付きながら、揺れる乳房に後ろから触れ、愛撫している。ただひたすらにそれが気持ち良く、快感で、もっともっとして欲しいと子宮が疼き続けていた。
「良い具合だ……吸い付いてくるぞ。血の繋がった者同士は却って体の相性が良いという話もあるが、案外本当かもしれんな」
その独り言のような言葉の意味を噛み砕く余裕もなかった。
「嫌だっ、やだ、いやあ……っ!」
抗えぬ凶悪な快楽に全身を包まれ、真生子は身体を弓形に反らせ、二度目の絶頂を迎えた。そのままシーツに倒れこみ、薄れゆく意識の中、再び小さな声で想い人の名を呟いた。
悪夢はまだ、始まったばかりだった。