「んっ……ふあ、」

皆が寝静まり、しんとした廊下に、声が漏れてしまわないかと、そればかりが心配なのだろう。自分の口元を押さえる妹の手を剥ぎ取り、指を絡ませてぎゅっと握りこむと、抵抗する術すら失った彼女は、もどかしく体をよじる。
そんなナミネの様子を、彼女の脚の間から見上げながら、ディオは容赦の無い愛撫を淡々と続けていた。
数度の行為を経て、幾分か濡れやすくなった妹の女の部分を舌でこじ開けながら、丁寧に愛液を舐めとっていく。舌先で堅くなった部分を押し潰すと、それが堪らなく良いらしく、身をくねらせて喘ぐのが面白い。

「ひ、……兄さん、もう……もう、許して……ゆるしてっ」

顔を真っ赤にしてぶるぶると震える妹が可笑しくて、もっと意地悪をしてみたくなるのだ。

「折角、舌で可愛がってやっているというのに……」
「だ、だって……はずかしくて……しんじゃう……っ」

ふうっと息を吹きかけながら言うと、体を敏感に反応させながらも、ナミネは懸命な様子で首を横に振る。その必死な顔が、さらに兄の醜く歪んだ劣情を煽るのだとは、彼女には知る由もないのだろう。ディオはふっと唇の端を吊り上げて笑った。
再び、ナミネの襞にキスを落とし、そこをねっとりと舐め上げる。蠢きながら男を誘う膣口に、人差し指を徐に差し入れると、すぐにきゅうきゅうと締め付けて来た。堪らず緩く抜き差しする。中の肉の壁は、熱く柔らかく、うねる様に絡み付いてくる。試しにもう一本指を突っ込んでみると、ナミネは苦痛を堪えるような呻き声を上げるが、気にせず根元まで差し込んだ。少しキツイが、案外、簡単に入ってしまうものだ。ついつい出し入れする動きを早めると、痛みに耐えかねたナミネの手が伸びて来て、制止させられた。

「痛い! いたい、にいさんっ……」
「……」
「や、やさしく。優しくして」

息も絶え絶えに懇願する妹をじっと見つめた。涙で潤んだ目が、高揚した頬が、唇から垂れた唾液が……全てがディオの心を波立たせる。

実の妹に性欲を抱くなど、異常以外の何物でも無いだろう。だが、ディオのそれは、凶悪な支配欲と独占欲に付随して生まれたものだ。この、脆く弱い小さな妹を、手の届く範囲から一歩も外に出さないようにして、完全に自分のものにするための手段としては、セックスは実に合理的なものだった。
それでも勿論、愛しい、という感情もある。だが、それが兄妹としての愛なのか、異性に対する愛なのかは、ディオ自身にもよく分からない。恐らくは、ナミネも同じような感情を自分に持っているのだということは、彼女の態度から分かっているが。

どちらにせよ、ディオにナミネを手放す気は無い。他の男と結婚させるなど以ての外だ。彼女が結婚適齢期を迎える頃には、もうジョースター家の財産は自分のものになっている筈なのだ。
もしそれに間に合わず、ジョースター卿から縁談を持ちかけられたとしても、そんなものに応じさせるつもりもない。

「ナミネ……」

熱い息を吐き出しながら彼女の名を呼ぶ。身体を移動させ、空いている方の腕をナミネの背中に回し、肩を抱くようにしながら、突っ込んでいた指をくいと動かした。少し刺激しただけで、膣がぎゅうと収縮して反応する。指の腹で探るように動かしていくと、ナミネは嫌がって腰を引こうともがいた。そんなことをしたって、こちらにやめる気はないし、無駄なのに。内心ほくそ笑みながら、その様子を楽しむ。中指を折り曲げたところにある、少し感触の違う柔らかいところをグリグリ押し上げてみると、あからさまに反応が変わった。

「に、さあ……ん。兄さん……あっ!」
「ここが好いのか」

顔を真っ赤にして震えるばかりで、兄の言葉に答える様子の無い妹に、思わず嫌らしい笑みを浮かべずにはいられない。強制的に快楽を与えられるというのは、一体どんな気分なのだろう……ディオは目を細めた。
何度も何度もしつこくその場所を可愛がっていると、ナミネは次第に強くなる快楽の波が怖いらしく、自分の方からディオにしがみついて来た。それに気を良くして、今度は緩急をつけながら刺激してみる。
ナミネは眉根を寄せてぎゅっと歯を食いしばり、それから脚をピンと伸ばして身体を硬直させた。

「──……ッ!!」

ぶるり、と白い首筋が震えて。ディオの腕を掴む手に力がこもり、爪が肌に食い込む。
案外、呆気なく達してしまった。指を引き抜くと、一緒にどろっとしたものが外へ溢れてくる。

「……どうだ? どんな気分だ」
「……? なんだか、へんなかんじ……」

ナミネは肩で息をしながら、不思議そうな顔で兄を見上げてくる。彼女の頭を優しく撫でて、頬にキスをしてから、白い脚の間に身体を割り込ませた。
この後何をするのか合点がいったらしく、ナミネは不安そうな顔をする。その怯える目が、堪らなくディオの加虐心を揺さぶるのだ。
お互いの体に残っていた衣服を全て取り払い、とっくに猛っていた自分自身を彼女のそれにあてがうと、怖がって体に力を込めてしまう。先端を軽く擦り付けながら、剥き出しの乳房に吸い付いた。たっぷりと唾液を含ませた舌を乳首に絡め、甘く噛むと、ナミネはそれが好きらしく、もぞもぞと脚を動かしながら感じている。

「おい……力を抜け」

無理、と言わんばかりに首を横に振るので、思わずため息が漏れる。仕方が無いので、やや強引に先端を押し込み、そのまま一息で一番奥まで突き上げた。

「いっ、……!」

引きつった苦痛の声が上がる。顔を歪めて背筋を反らせ、唇を噛み締めながら痛みに耐える妹を見下ろしていると、征服している、という悦びで徐々に満たされていく。泣きながらも健気に兄を受け入れる姿は、なんと可愛らしく、愛おしいのだろう。
抱きしめると、互いの素肌が擦れ合う。ナミネの滑らかな肌がとても心地良い。柔らかい胸の膨らみが胸板に押し付けられるのも、悪くない。
ゆるゆると腰を動かすと、微かな水音がそこから漏れ出した。妹は荒く息を吐き出しながらも、時折小さな声で甘ったるく鳴く。それに気分を良くしながら、もっとその声を引き出そうと、最奥を狙って突き立てると、好いところに当たったらしく、ナミネは一際大きく喘いで身体を仰け反らせた。

「ひっ……!」
「ナミネ……」
「にいさ、っ、そんなに……っ」

リズミカルに腰を打ち付ける。肉と肉がぶつかる乾いた音が部屋に響く。
嘘か真か、血を分けた肉親というのは、却って体の相性がいいという話を聞いたことがあった。今思うに、それは本当だったかもしれない。奥に突き進めば進むほど、熱くぬめる肉壁が脈打つように狭まり、ディオに絡み付いて離さない。それがあまりに心地よくて、夢中で腰を動かす。
ひと突きするたびに、ナミネの奥の方から熱い体液が溢れ出してくるようで、もう繋がっているところはドロドロのぐちゃぐちゃに蕩けていて、どうなっているのかわからないほどだ。

「……っ、ナミネ……」

どんなに非道いことをされて泣き喚いても、必ず最後にはディオを信じ、健気に後をついてきて身を摺り寄せてくる彼女が、本当に可愛くて可愛くて仕方が無い。なにせ他の女には、こんな気持ちになったことはないのだ。大切にしてやりたい、ずっと側に置いておきたい、手を握ってやりたい……幼い頃から一緒にいた妹の存在だけが、ディオの心を愛情で絡め取る。
名前を呼ぶと、ナミネは潤んだ瞳をこちらに向けた。目が合うと、腕を伸ばしてディオの首に巻きつけてくる。

「にいさん……っ」
「ナミネ……おれを愛しているか?」

返事はない。それでも、切ない眼差しが縋るように見上げてきて、ディオは薄く笑った。堪らずゾクゾクとした感覚が背筋を駆け上がり、射精感が高まる。彼女を強く抱きしめ、乱暴に唇を塞いだ。荒々しい動きに応えるように、たどたどしく舌を伸ばすのが愛らしい。
ピストンの動きを早めて、こみ上げてきた欲望が溢れ出る直前に自身を引き抜く。ナミネの白い腹の上に、熱い精が放たれる様を、彼女はぼんやりと見つめていた。


◆◇◆


兄が完全に眠ったのを見届けてから、ナミネはそうっとベッドから抜け出した。
足の間が引きつれるように痛む。連続で揺さぶられた腰もどこかおかしい。ゆっくりとした動作で、薄いネグリジェの上にカーディガンを羽織る。音を立てないように扉を開け、部屋を出る前に一度だけちらりとベッドを振り返った。ディオの規則正しい寝息が聞こえてくる。それを確認してから、ナミネは廊下に滑り出た。
青白い月明かりが大きな窓から差し込んでいる。ナミネはバルコニーに足を向けた。扉を開けると同時に風が吹き込んできて、上品な上着の裾をはためかせる。
柵の上に手を置いて、雲一つ無い夜空を見上げた。キラキラと眩く輝く星の清廉さと、夜風の冷たさは、火照った頭を冷やすには十分だった。

行為の終わり際の兄の問いが、いつまでも胸に渦巻いている。
おれを愛しているか、と彼は言った。
好きなことには違いない。だが、彼が求めている愛は一体どの類のものなのか。兄妹愛では無いのか。わからなかった。
自分の兄に対する慕情だって、ただの兄妹に対する家族愛のはずだ。それなのにどうして、夜な夜なディオが自分の部屋へやってくるのを拒めないのか。拒むどころか、心の底ではむしろ受け入れ始めている。
体が快楽に支配されているのではない。これはもっと、別の感情がそうさせるのだ。
冷たい風に吹き付けられて、小さく体を震わせて肩を竦める。
と、不意に背中を何か暖かいもので包み込まれて、ナミネは驚いて振り返った。そこにはやはり呆れたような顔のディオが居て、少し背を屈めて妹を抱きしめていた。

「こんなところにいたのか。風邪をひくぞ」
「兄さん……」

バルコニーの扉を開けた音にも、足音にも、ぼうっとしていて気が付かなかった。腰に回された逞しい腕に僅かに力が篭り、サラサラした金髪が頬に触れる。それをくすぐったく思って、ナミネは体をもぞつかせた。

「起きてたの? ……起こしちゃった?」
「お前がドアを閉める音でな」

気を遣って静かに閉めたつもりだったのだけれど。小さな声でごめんなさいと呟いてから、ナミネは顔を前に戻した。ディオの方もそれきり黙ってしまって、風が草木を揺らす音がやけに大きく響いた。

「……これ以上は体に障るぞ」

背中から温もりが離れる。ナミネは我に返った。寝るぞ、と言ってディオは踵を返す。
その広い背中が離れていくのを、ナミネはなぜか恐ろしく感じた。